かもめの英語ハッピーブログ

英語講師、翻訳者、元外資系航空会社客室乗務員のkamomeskyが、英語学習法、実践の記録、日々の気付きなどについて日本語と英語で書いています。

お気に入りのコラムニストはいますか?

こんにちは。The Japan TimesとThe New York Timesを時々読んでいます(セット販売なのです)。JTのオピニオン面は、NYTに比べると多様さに欠ける印象がありますが、Robert J. Samuelson氏の名前を見つけると、私のテンションはグンと上がります。

Samuelson氏はThe Washington Postのコラムニストなので、Post紙からJTへの配信記事ということになります。

楽しみにしている1番の理由は、その読みやすさです。主にアメリカと世界の経済について書かれているのですが、背景を知らないとつまらない、ということがありません。知っていればもっと面白いとは思うのですが。

どんな読者が読んでも(ノンネイティブで外国人の私でも)わかるように書かれているのは書き手の技量だと思います。読んでいて余計なストレスを感じない上に、視野を広げてくれるという点で「間違いのない」コラムなのです。

今回(8/8付)のコラムは、”The triumph of American downward mobility”(「アメリカの下降モビリティ(移動)の勝利」)でした。(注:下降モビリティというのは定訳ではありません)

下がっているのに勝利(triumph)というのは矛盾しますから、ここはタイトルを少し深読みする必要があります。本来upward mobility という概念が定着していて、それをアメリカ社会の成功のしるしとしてきた前提が覆ったことを皮肉っている、と読めます。

ここでキーワードとなる「モビリティ」について、ネット上にわかりやすい説明がありました。

「モビリティとは、ある所得階層に属する家庭に生まれた子供が、大人になる過程で異なる階層(とくに上位の階層)に移動する可能性を指す。「子供の世代は親の世代よりも良い暮らしができる」という、アメリカン・ドリームの根幹となる考え方といっても良い。」

東京財団政策研究所のウェブサイトより)

「子供の世代は親の世代よりも良い暮らしができる」―上の説明の中では「アメリカン・ドリームの根幹」とされていますが、コラムでは axiom(原則、自明の理、格言)と書かれていました。言い切るところがすごい・・・。

コラムではこのaxiomが崩れつつあることが明らかになったというのですから、事実ならアメリカ社会にとって相当なショックなのではないでしょうか。

複数の経済学者のチーム(Raj Chetty and fellow economists from Stanford, Harvard and the University of California-Berkeley)がさまざまなデータベースを統合して、親と子がそれぞれ30歳頃の世帯所得(税込み)を比較した研究結果は驚くべきものでした。

1940年に生まれた子供の約90%が親の収入を超えたものの、1970年生まれではその割合は61%に下がり、1980年生まれでは50%でした。この変化をSamuelson氏は

“That’s a sea change.”

(完全な様変わりである)

と表現しています。大変化というときの定番表現です。

 “You can see the consequences among millennials, those born from 1981 to 1996. Their squeezed incomes have forced them to rearrange their lives. They’re marrying later, buying homes later, having children later and — to save money — living longer with their parents.”

(この影響は1981~1996年生まれのミレニアル世代にも表れている。低所得は彼らに人生設計の見直しを余儀なくしている。彼らは結婚を遅らせ、住宅の購入を遅らせ、子供を持つことを遅らせ―節約のために―実家からの独立を遅らせている)

あれ、どこかで聞いたことがあるような・・・。

Brookings Institutionの研究者によると、このトレンドの最大の敗者(loser)は middle class(中産階級)と upper-middle class(上流中産階級)で、従来はマイナスの社会変化に対して最も保護されていると考えられてきたクラス。Samuelson氏は、自身も upper-middle classに属するので不安だ、と書いています。

所得が低い原因ですが、「質の悪い教育、所得格差による消費低迷、住宅建築の鈍化、不適切なイノベーション、過剰な規制など、usual suspects(いつも名前の挙がる容疑者)が絡み合った複雑なもの」だということです。そういうことなら、日本にとっても対岸の火事ではなさそうだという気がします。

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現在進行中の大きなトレンドを知るきっかけになり、日本にもつながりがあるところが多いので、Samuelson氏のコラムは読んでおきたいと思うのです。

 

本日もお読みくださりありがとうございます♪

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