かもめの英語ハッピーブログ

英語講師、翻訳者、元外資系航空会社客室乗務員のkamomeskyが、英語学習法、実践の記録、日々の気付きなどについて日本語と英語で書いています。

空の女王が引退していた。

こんにちは。突然ですが、6314が退役していました。

ボーイング747-400型機は2階席部分のでっぱりが特徴的で、一目でそれと分かる機体です。同型機のNo. 6314が今月、アリゾナの通称「飛行機の墓場」へ入ったことをthe New York Times国際版の記事”A new retiree in the Arizona desert: The 747”(アリゾナ砂漠に新たな退役機:747)で知りました。

記事には”the final 747 flight by any commercial United States airline”(米民間航空会社による最後の747飛行)とあり、これがアメリカで現役で飛んでいた最後の1機だったことがわかります。

航空機にはそれぞれを特定する番号が与えられています。私たちクルーはship numberと呼んでいましたが俗称かもしれません。DC-10が消えたときも、日本の航空会社のフリートからジャンボが消えた時も「遂に・・・」と思いはしたものの、特定のship numberが出ると、こうも身近な人の引退のように寂しく感じるものかと思います。

航空機ですが機体はshipと呼ばれていて、具体的には 

A:「まだゲートにshipが来てないね」

B:「成田便にship回したらしいよ」 

A:「またー?」

のように使います(笑)。私が乗務していた頃、Ship No. 6314は保有する747-400の中でも一番新しい機体で、その日乗務するshipが6314と分かると、それだけで気分が上がったものです。ニックネームを持っていた少数の機体の1つでもあり、6314はボディの前輪格納庫付近に流麗な文字で”the City of Shanghai”と書かれていました。

満席の場合、ビジネスクラス65席/コーチクラス338席のお客様を載せていました。当時は大型機で一気に拠点(ハブ)空港に輸送、そこから各都市へ結ぶ(ハブ&スポーク)ネットワーク輸送が航空会社にとって効率的な運営手法とされていました。近年はそのビジネスモデルも変化して、記事によると、 

“Many airlines are moving to a business model that focuses on connecting more cities directly with smaller, more fuel-efficient planes, rather than funneling passengers through a few large hubs.”

(多くの航空会社は、少数の巨大ハブ空港から乗客を送り込む方式に代わって、小型で燃料効率の高い航空機でより多くの都市を直接結ぶことに重点を置くビジネスモデルに移行しつつある)

大型でも燃料効率に優れた機種が開発されている昨今、-400はいかにも古く非効率に映ります。

その後、私の所属していたエアラインはデルタ航空に買収され、6314もそのフリートに入ったようでした。ネットで調べると、6314の総飛行距離は約6000万マイルだったそうです(地球1周は約2万5000マイル)。

アリゾナ州のPinal Airparkでは、退役した飛行機たちが静かに余生を過ごしています(行ったことはありません)。先輩クルーから、飛行機たちはここで風化するに任せられるという悲しい話を聞いていましたが、記事によれば、使える部品は再利用されているそうです。機体を溶かして飲料缶や自動車部品にすることもでき、座席などが映画やドラマのセットに使われることもあるそう。一機まるごと買い取られていく場合も。 

 “Even though they are less fuel efficient than modern planes, their higher operating cost is offset by the low purchase price, making second-hand jumbo jets an ideal choice for airlines looking to expand.” 

(現代の航空機より燃料効率は劣るものの、高い運航費は低い購入価格によって相殺されるため、拡大を目指すエアラインにとって中古ジャンボ機は理想的な選択肢となっている)

どこかで6314に会えるかもしれないという希望を残しつつ。

本日もお読み下さりありがとうございます。

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