かもめの英語ハッピーブログ

英語講師、翻訳者、元外資系航空会社客室乗務員のkamomeskyが、英語学習法、実践の記録、日々の気付きなどについて日本語と英語で書いています。

空の旅は「顔パス」時代に。

こんにちは。米系航空会社の客室乗務員をしていたのがつい昨日のようにも、遠い昔のようにも思われる今日この頃。久しくアメリカの土を踏んでおりませんが、アメリカ発のフライトは、顔認識を利用した Traveler Verification Service(旅行者確認サービス)というプログラムでずいぶん便利になっているようです。

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今日は The New York Times国際版(8月8日付)の”Few rules for using travelers’ face scans(旅行者の顔スキャン(画像)利用にほぼ規定なし)”という記事から。(インターネット版では“An Airline Scans Your Face. You Take Off. But Few Rules Govern Where Your Data Goes.”という見出しになっています。)

国際線の搭乗ゲートで顔写真を撮るだけ、チケットもアプリも不要で搭乗が可能になるTravelers Verification Service プログラム。お顔が boarding pass になり、文字通り「顔パス」というわけです。時代は変わりましたね・・・。

記事によると、現在このプログラムは、ロサンゼルス、デトロイト、オーランド、アトランタの4空港で航空会社4社(デルタ航空、ルフトハンザ航空、ブリティッシュエアウェイズ、ジェット・ブルー)が導入しています。大多数の乗客がこのプログラムに参加しているそう。

ただ、利便性を手放しで喜ぶわけにはいきません。顔認証の導入には心配な点もあります。そもそも、顔や指紋などの生体認証データは変更が不可能なので、非常に厳重に取り扱われるべきもの。他の身分証などとはまったく異なる性質のものです。

このプログラムは、米国土安全保障省が運営していますが、参加企業(航空会社と一部のクル―ズ客船運航会社)がデータを利用したり保存したりできるので、個人情報が誤用・乱用される恐れがあります。

“The data the airlines collect is used to verify the identity of passengers leaving the country, an attempt by the department to better track foreigners who overstay their visas. After passengers’ faces are scanned at the gate, the scan is sent to Customs and Border Protection and linked with other personally identifying data, such as date of birth and passport and flight information.”

(航空会社が収集したデータは出国する乗客の身元確認に利用される。これは当局がビザの在留期限を超えて不法滞在している外国人を特定する試みである。搭乗口で乗客の顔がスキャンされると、データは国境保護局に送られ、生年月日、パスポート、フライト情報など、その他の個人特定データとリンクされる)

外国人の出入国を管理するという国の大目的があるわけですが、顔のデータの保護や利用について当局が把握しているわけではないようです。

“...few companies participating in the American program, called the Traveler Verification Service, give explicit guarantees that passengers’ facial recognition data will be brotected. “

(,,,, 旅行者確認サービスと呼ばれるこのプログラムに参加する企業のごく少数しか、乗客の顔認識データの保護に明確な保証を与えていない)

結構グレーな状況で実施されているんですね・・・。

記事によると、旅行者25人に1人の割合で、正当なIDを持っているのに顔認証で拒否されるケースが発生するなど、現段階では顔認証の精度にもまだ疑問が残っているそうです。

また、

“Further complicating the situation is the fact that the companies share passengers’ data with the technology vendors they have contracted to create the infrastructure that collects the information and sends it to federal officials. Those vendors — Vision-Box, SITA and NEC Corporation — each have their own privacy policies with differing levels of accessibility.”

(状況をさらに複雑にしているのは、航空会社が情報を収集し連邦当局へ送信するインフラ構築のために契約したテクノロジー・ベンダーと、乗客のデータを共有しているという事実である。これらのベンダー企業―Vision-Box、SITA、NEC Corporation―はそれぞれが独自のプライバシーポリシーを持ち、アクセシビリティーのレベルもまちまちである)

技術上の契約先には必然的にデータが流れます。

プライバシーをめぐる懸念にもかかわらず、Traveler Verification Serviceは拡大する兆しです。アメリカ議会は生体認証出入国システムの導入に10億ドルの予算を認可(2016年)しています。

ちょうどこの日の The Japan Times には、東京オリンピックパラリンピックで大会関係者には顔認証を導入するという、明るいムード全開の記事が掲載されていたのが対照的でした。

ちょっと長くなりました。

本日もお読みくださりありがとうございます♪

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