飛行機のドアはいつだって非常口。
東北新幹線が、1つのドアが開いた状態で走っていたというニュースがあり、そんなことがあるのかと驚きました。飛行機なら・・・。
飛行機の「ドア」と呼ばれるものですが、乗務員としては「非常口」という認識。これを開けようとする人が時々いるようですが、ご安心ください。上空で航行中の機内はpressurized(与圧)されているので、気圧の関係で人の力ではドアはまず開けられません。
ドアは非常口であるため、離陸後から着陸までは非常事態に対応できるよう、乗務員が手動で準備します。この状態が ”armed”です。直訳すると「武装されて」なのですが、「緊急事態に備えて」ということです。
離陸前、操縦室から客室乗務員に、ドアモードをarmed にするようアナウンスで指示が出ます。
”Flight attendants, prepare doors for departure.”
これが聞こえると、一斉にそれぞれが担当する非常口へ行き、ドアモードをarmedに切り替え、反対側の非常口もarmedされているかをお互いに目視で確認します(cross check)。その担当乗務員とお互いに親指を立てて「cross checkしたよ」サインを送り合います。
これで機体の何が変わったかというと、ドアを開けると自動的に緊急脱出スライド(*)が出る状態になった、ということで、とても重要なプロセスなのです。(* 救命いかだにもなるので本来はslide/raftです。)
無事に着陸した後は、この態勢を解いてドアを開けてもスライドが出ないようにする必要があります。今度は”disarmed”(armを解除した状態)にして、cross check。その後、離陸前と違って、パーサー(客室業務の責任者)からそれぞれのステーションにインターフォンで確認連絡が入ります。
パーサー:”Two Left(2L*)?”
2L担当FA:”Disarmed.”(解除しました)
パーサー:"Three Left(3L)?”
3L担当FA:”Disarmed.”
(* 機体左側、前方から2つ目のドア/ステーションのこと)
・・・と、機内の全てのドアのステーションを確認していきますが、この頃には、お客様たちは荷物をまとめるのに忙しくて、私たちが何をしているかなんて見ていないはず(笑)。
もし、armedになったまま、サービス業務の方がドアを開けてしまったりしたら、そこでスライドがバーンと出てしまうことになります(P航空では客室乗務員が離陸前にスライドを出してしまう件が発生したようです)。新人訓練中、出てしまったスライドを格納するのに100万円はかかるなどと脅されていたものです・・・。金額はともかく、定時運航に支障が出ることは避けられないでしょう。
新人訓練中、飛行機のドアに関する都市伝説ならぬエアライン伝説(?)を聞きました。
某国内航空会社の機内に、酔っ払ってドアに並みならぬ関心を示すお客様がいらっしゃいました。中年とおぼしきその男性に、少し離れた場所にいた客室乗務員が気付きました。距離がありますから「お客様ー、ドアにお手を触れないでくださいねー」「お客様ー」「おーきゃーくーさーまー」とお声がけをしながら近づいていきますが、遂に男性がハンドルに手を掛けた瞬間、その客室乗務員が大声で言ったことには、
「おっさん、アカン!」
この話を教えてくれたのは、キャセイパシフィック航空出身の同期でした。
小話で終わってしまった(笑)。
最後までお読みくださってありがとうございました。
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